幸福論



すでに午前三時を回っている
家家は静まりかえり
私の部屋のみ光を放つ
虫達の声が美しく響き
涼しい風が全身をつつみこむ
忙しなくすぎる時の流れから解き放たれ
身体を 心を 束縛するものなど一切ない

ああ 私はこの感覚をどれほど長く失っていただろうか
ああ 私はこの最大の幸福をどれほど長く失っていたであろうか

朝になって思い出そうとしても
思い出されぬであろう快感よ
この一篇の詩だけが語る
私の最高の快感よ

この快感は
子宮のなかに居た私の
一切の外界から隔てられた快感か
それとも
死を迎えた私の
この呪縛からの開放の快感か

いずれにせよ 私にとって最大の幸福よ
悪鬼そのものなる現世界を逃れた私の
ああ 感じ得る最高の幸福よ


Copyright © 2007 Itaru Yamamoto all right reserved.


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