立ち上がってセティの背を見送った王子は、彼女が見えなくなると、やがて腰を折ってクツクツと笑い始めた。堪えるどころのレベルは、もうとっくに超えている。今なら、プライドも何をも捨てて、馬鹿みたいな大声で素直に笑えるかもしれない。
「まいった」
笑い声の中に、思わず漏れる感情や言葉が、溢れてしかたない。

最初は、退屈しのぎのおもちゃだったのに。
その娘が、この自分に、友達になってあげるだなんて。
その言葉に、今までにない感情が、立ち昇る。

しかも、彼女自身は気付いていなかったが、
はじめて、笑いかけてくれた。

「傑作だ」

思えば、自分は寂しさを感じるはずなんて無かった。少なくとも、彼女と出会うまでは。
それなのに、そんな様子を指摘されてしまったということは、つまり。

「知らないうちに、世界は動き出していたんだな」

そして、その世界を動かしたのは、彼女に他ならない。

何も、知らないのに。

いや、何も知らないからこそ。

「しんじられないっ」

彼女の笑顔一つに、こんなにも簡単に世界は生まれようとしている。

もう、この先自分にもどうなるかなんてわからない。こんな色鮮やかな視界は、初めてだ。

「……欲しく、なってしまった」



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